世界初の試み!DOHC搭載量産バイク「ドリームCB450」

空冷並列2気筒DOHCエンジンの量産車世界初搭載

 ホンダの「ドリームCB450」は、1965年に量産市販バイクとして世界で初めてDOHC(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)エンジンを搭載した画期的な存在であった。DOHCとは、2つのカムシャフトでエンジン内の吸排気バルブを個別に操作する仕組みだ。この構造により、高回転域でもバルブの動きを正確に制御でき、燃焼効率を高められるのが大きな利点である。

 従来の量産車にはSOHC(シングル・オーバーヘッド・カムシャフト)エンジンが採用されていた。SOHCはカムシャフトが1本しかないため、DOHCに比べて高回転時のバルブ制御に限界があった。そのため高出力化に課題があったのだ。DOHCエンジンは、その点を解決する革新的な機構として、レース用マシンなどの特殊車両で一部採用されていたが、量産車への搭載は生産コストの面から避けられてきた。

 しかしホンダは、1959年からのマン島TTレースやグランプリ参戦を通じて、DOHCエンジンの開発に取り組んできた。そしてその技術を結集し、「ドリームCB450」に世界で初めて量産DOHCエンジンを搭載したのである。これによりホンダは、高性能と量産化の両立を実現したのだった。

先進のバルブ機構とハイパフォーマンス

 「ドリームCB450」に搭載された空冷4ストローク並列2気筒DOHCエンジンの総排気量は444ccである。最高出力は43psを8500rpmの高回転域で発揮し、最高時速は180km/hに達する驚異的な性能を誇った。この高パフォーマンスを支えたのが、バルブ開閉機構の革新的な採用だった。

 一般的にバルブの開閉にはスプリングが使われるが、高回転時にはスプリングの耐久性が課題となる。そこでホンダは、鉄の棒をねじってバネの代わりとする「トーションバー方式」を採用した。この方式は、後にも先にもあまり例を見ない先進的なものであった。

 当時の日本国内には、この高回転・高負荷に耐えられるバネを製造できるメーカーがなかったため、ホンダは独自の方式を編み出したのである。このようにバルブ機構にも最先端の技術を投入することで、650ccクラスの欧州ライバル車に対抗できる高性能を「ドリームCB450」は実現することができたのだ。

利便性と高性能を両立したデザイン

 「ドリームCB450」のデザインも、高性能と利便性の両立を図っている。フレームはクレードル式を採用し、エンジンを低重心に配置できるようになっている。これにより、高速走行時の操縦安定性が増している。

 また、シートは横方向に開閉式になっており、ワンタッチで簡単に開けられる。これにより電装品の点検などのメンテナンス性が大幅に向上した。さらにリアショックには3段階の減衰力調整機能が備わっており、路面状況に合わせた微調整が可能だ。

 メーター周りにも先進の技術が投入されている。タコメーターとスピードメーターが一体型になっており、視認性が高い。さらに宝石軸受の採用で耐久性もアップしている。

 このように「ドリームCB450」は、革新的な技術の結晶であると同時に、実用性の高いデザインとなっている。ホンダの持つ高い技術力が随所に現れた、時代を先取りした傑作バイクであったと言えるだろう。

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